「浴衣展」で感じた日本人の潔さと粋。

「ゆかた浴衣YUKATAーすずしさのデザイン、いまむかしー展」に行ってきました。
泉屋博古館とは
せんおくはくこかん
と読みます。


六本木一丁目にある泉屋博古館分館。
泉ガーデンタワーからエスカレーターなどを使って入ります。
屋根もあるので雨でも濡れないのが嬉しい。
かつてこの地は大名屋敷などが建ち並ぶところで、今でもその痕跡が残っています。
住友家が蒐集した美術品を保存、展示しています。
青銅器や古鏡のコレクションでは大変有名だそうです。
京都に本館が、分館として東京六本木にあります。
「ゆかた展」すずしさのデザイン、いまむかし
さて、今回の「ゆかた展」は浴衣をテーマに実物や浮世絵、型紙などからデザインと魅力を紐解く、という企画です。
150点ほどの展示物でしたが、興味深く、満足できる企画でした。
江戸時代から現代の実物の浴衣が約90点、染色に使う当時の型紙、浴衣の人物の浮世絵、かんざしなど浴衣にまつわる展示です。
まず、第一印象は「昔の浴衣って、超カッコ良い!」
その大胆なデザインといったら!
見てください。
どうです?
こちらは、江戸時代のものです。
海の生き物がリアルでいききと描かれています。
あみあみの模様は「投網」。
大漁ですね。
しかも、どれもおめでたいお魚。
フグは福だし、右側はおそらく鰹。
カツオは勝男と当て字をして縁起が良い。左側の隠れているのは鯛でしょう。
おめでたい。
とってもお洒落です。大胆だけど潔くてカッコ良い。
こちらは浴衣を着た男性。
豊原国周という絵師の作品ですが、よく見ると、浴衣の柄が「国周」という文字になっているからビックリです。
ところで、着物の柄で文字というのはよく見かけます。
「判じもの」なんていいますが、「寿」「福」などの文字を柄に見立てたり、歌舞伎役者の名前をもじってデザインにしたり、「よきことぎく」「かまわぬ」などの言葉をモチーフとしてデザインするなど、日本人って文化的で洒脱なセンスあるんですよね~。
言霊といって、日本人には言葉に力があると信じてきたんですね。その言葉を身に付けることで身を守ったり、幸せの願いを込めてきました。
浴衣をじっくり見て分かったこと
この展覧会では、江戸時代~現代にいたるまでの浴衣の実物が飾られているのですが、近くで見られるので木綿や麻などの布地の違いも分かります。
型染めや絞りなど技法の違いにも触れられて、興味深かったですね。
江戸時代のものを見られるなんてめったにありませんから、大変貴重です。
しかも、どれも保存状態が良い!
色も褪せていないし、布地のダメージも少ない。
和裁士の経験もある私たちは、普通、気にならないような部分も気になってしまいました。
例えば、袖口と振りに布が付いてる!とか、何で広衿なの?とか、男物?女物?とか、内揚げがついてる!とか・・・
他の人が聞いたら「は?」というマニアックな部分で盛り上がってしまいました (^^ゞ
この展覧会では、時代と共にデザインの流行があることがわかりました。
そもそも浴衣はお風呂上りに着るものでした。
バスローブっぽい。
それが江戸時代に入り実用性とデザイン性を兼ねた衣類になりました。
江戸時代は、自宅にお風呂はありませんから外に出てお風呂屋さんに入りに行っていました。
だから、浴衣は湯上りに着るものでもあり、人に見られるものでもあったんです。
人よりも目立つことが好きだった江戸っ子ですから、お洒落には命を賭けていました。
「これが自分の個性!おしゃれの見せ所!」
しかも、パッと見では分からなくて、何か意味を持たせたりする。う~ん、ニクいね!
明治以降は、より生活感が出てきた。オーソドックスであまり主張しない感じ。
大正~昭和初期になると画家の先生が浴衣のデザインをするようになります。
鏑木清方先生のデザイン浴衣が展示されていましたが、素敵でしたよ~。
そして、清水崑先生のカッパ!
私、思わず「かわいい~(*’ω’*) 欲しい~!!」
最後には人間国宝の浴衣の展示もあり、見ごたえありました。
現代では、浴衣といえば夏きものとして定番となりましたよね。
夏ならではの涼しさの演出でもありますし、快適に過ごす工夫でもあります。
そこに遊びや洒落のセンスが加わって、人をひきつける独特の魅力があるんだと思います。
もとは湯上りに着るものが、ライフスタイルの変遷とともに変わっていったわけですが、その日本人の自由な感性って本当にすごいなと感じました。
先人の感性と、チャレンジ精神に触れられた一日でした。
ちなみに、私はやっぱり、藍色と白の古典的な浴衣が好きだな~と改めて感じました。
素足でさっぱりと着るのが好きです。