宝生能楽堂にてお能鑑賞レビュー
初体験の能楽鑑賞の体験記です。
青山の銕仙会の能体験をさせていただいたご縁で、水道橋の宝生能楽堂での能楽を観てきました。ちょっぴり緊張&不安なお能初体験の様子をレポートします。
宝生能楽堂の中
なんせ、初めてですから・・・
能って、難しそう・・・寝ちゃったらどうしよう・・・などと、ちょっぴり緊張&不安気味。
能楽堂の中は、清廉とした気が流れていて、とても厳かです。
座席はシート席。ゆったり腰掛けられます。
今回の演目は
「鉢木」
「福の神」
「葵上」
演目「葵上」あらすじ
言わずと知れた源氏物語を題材にした能です。
六条の御息所が、光源氏に想いを寄せるあまりに「生霊」となって光源氏の正妻・葵上を苦しめる、というところから始まります。
鬼女に化してしまった六条の御息所。
「憎し、葵上!」
と病床に伏す葵上を苦しませます。
このままでは命までも危くなった時、徳の高い僧の祈祷により六条の御息所の怨念は鎮まる。
そして葵上は快復する、というお話です。
六条の御息所が主役、と言っても良いほどの存在感です。
最初は普通の面(おもて)で出てくるののですが、生霊となって現れる場面では恐ろしい般若の面に変わります。
狂女となってしまった嫉妬や執念、女の情念が、激しい感情の高ぶりが表現されます。
正直、怖かった・・・
子供が観たら泣いちゃうかも。っていうくらい怖くてゾッとしました。
恨みごとを言う場面なんか、本当に怖かった。源氏、頼むよ~、って思いましたもの。
六条の御息所という人は、知的で高貴な女性なんですよね。登場してくる場面なんかも品格がある。
でも、光源氏が大好き過ぎて生霊となってしまった・・・
ちょっと切ないんだな。
そのギャップの差が激しくて、人間の情念の激しさや女の悲しさみたいなものがをより強く感じましたし、エンタテイメントとしても面白かったですね。
その女の情念を表しているものを発見しました。
装束に隠された恐ろしい意味とは?
六条の御息所の装束が「うろこ柄」でした。
そう、蛇のうろこ柄。
この柄は古くから着物や帯にも使われてきた古典柄。
三角形は魔ものや鬼のような目に見えない邪悪な存在のシンボルでした。
その柄を身に纏うことで自分や子供に悪いことが降りかからないよう、魔除けや厄除けの願いを込めたといわれています。
そして、女性の心に棲む嫉妬や情念、執念を表しているともいわれています。
今回のように少し怖い女性が纏う衣装としても有名で、六条の御息所のほかにも歌舞伎の娘道成寺にもでてきます。
役者が身に付ける衣装だけでも、どういう役で、どういう場面なのかが分かるようになっているのですね。
初能楽の感想
能・・・スリ足でゆっくりと動き、難解なことばで静かに始まり静かに終わっていくもの。
と思い込んでいたんです。
実際に生で見ると私の先入観は覆されました。
役者さん、笛、鼓、謡が一体となり時に激しく、時に厳かに物語が紡ぎだされていきます。
エンターテイメント性もあいまって、飽きることなく世界に没頭することができました。
確かに、役者さんの発する言葉は難しくて分からないのですが、謡本という歌詞カードのようなものを見たり、あらすじを解説したものを読みながら鑑賞するとだいたい分かると思います。
古語だし、大げさに言っている部分もありますが、総じて日本語が美しい。
語感が柔らかく、流れるようで聞いているだけでこころの琴線に触れるような響きでした。
楽器は、笛と大鼓と小鼓しかないのですが「カーン」と響く音や、「ポンッ」というスキッとした音、「いよー」という掛け声が派手ではないものの、喜怒哀楽の全てを表現しているかのようでとても深いものを感じました。
初のお能体験は、感性が刺激される時間でした。
自分のなかの新たな扉が開かれたような、そんな感覚でした。
もっと知識を深めて、また生で鑑賞してみたいと思いました。