江戸っ子に学ぶ初鰹の粋な楽しみ方

初夏の旬といえば、初鰹。

楽しみしている方も多いはず。

初鰹の時期は、4月末~6月。ちょうど青葉がきれいな季節です。

 

鰹は旬が二回ある魚です。

 

春先、黒潮に乗った鰹はエサを求めて、九州の方から北へ向かいます。

そのうち、4月~6月に水揚げされる鰹のことを、初鰹と呼んでいます。

のぼり鰹とも言うそうです。

 

時期が早いほど、はしりとして珍重されてきました。

 

ちなみに、鰹のもう一つの旬の時期は10月~11月頃。

逆に南下してきます。

 

これが戻り鰹

お味は、というと初鰹の方は餌場に向かう途中で水揚げされるので、脂肪分が少なくてさっぱりとした赤身が美味しい。

一方、戻り鰹は脂がのって濃厚なお味です。

 

今でも初鰹は旬の楽しみですが、かつて現代人とは比べ物にならないほど旬のものを食べることに半端ない情熱をかけていた人たちがいました。

 

それは、江戸の人たち。

 

初もの食いで長生きする!?

 

初鰹で思い出されるのがこの俳句。

 

目に青葉 山ほとどぎす 初鰹

この句は江戸時代の俳人、山口素堂の作として有名です。

 

初夏の風物を並べただけのなんの変哲もない句にも思えますが、語感やリズムが良く、爽やかな風さえ感じるようです。

目、耳、舌で感じる初夏ならではの爽快な季節の訪れに浮足立つような悦びがあふれています。

 

 

古くから日本人は、初ものを食べれば福を呼び込み、長寿になると信じてきました

 

これは日本独特の文化です。

 

旬を大事にしてきた日本人。特に、シーズンに初めてとれる食べるものを初ものといって珍重してきました。

「初もの七十五日」ともいわれ、初ものを食べると寿命が75日延びるという言い伝えがあります。

 

初ものには、他の食べ物にはないエネルギーがみなぎっていて、食べれば新たな生命力を得られると考えられてきました。

実際に、旬の食べものの栄養価は高く、新鮮です。

 

何より美味しい!!

 

 

栄養学的に優れているという以外にも、旬の食材を食べるメリットは、その食材がもつ本来の味や香り、季節感を感じ取ることができます。

食べることで、大地のエネルギーから心も体も充実させることができるんですね。

 

特に江戸に生きる人たちにとって、この初ものは非常に大きな意味をもっていました。

 

江戸っ子の初ガツオLOVE

 

江戸っ子にとっての初鰹は「初鰹は女房子供を質に入れてでも食え」と言われるほど大人気でした。

その情熱は半端ないものがありました。

 

 

 

 

なぜかというと、先ほど述べたように「初もの七十五日」が信じられていたから。初ものを食べて長寿にあやかろうとした。

 

そして、カツオは「勝男」と読みが同じという理由で武士が多かった江戸で好まれたから。

 

加えて、江戸っ子特有の「粋」という気質が加わったからです。

 

江戸時代、初鰹は鎌倉沖や伊豆沖で水揚げされていました。

水揚げされた鰹の鮮度はどんどん落ちていきます。

だから鰹売りという専門の魚屋さんがいて、水揚げされた魚を早く売るため、走って売り廻っていました。

 

当時は刺身で、辛子味噌で食べるのが一般的だったようです。

 

ただでさえ、貴重な鰹。

 

当時の値段は、「まな板に小判一枚初鰹」(室井其角)といわれるほど非常に高価なもので、初鰹一尾、三両という値がついたこともあったとか。

 

おおよその換算で現在の約30万円ほど。鰹一尾で、です。

 

 

江戸時代の貨幣価値を現代の価値に換算すると大工さんの日当が6600円くらい、月々の長屋の家賃が9900円くらいだったそうです。

 

初鰹がいかに高価だったか分かりますね。

 

そんなに高いなら旬を少しはずせば良いのに・・・って思うんですが・・・

ところが、それは「野暮!」とバカにされてしまいます。

 

誰よりも早く手に入れることは、江戸っ子にとっていくらお金がかかっても大事なことだったんですね。

 

初ものを「女房子供を質に入れて」までして手に入れることこそ「粋」の証だったわけです。

 

ちなみに、時期的なその粋ラインは?というと4月8日だったそうです。

それを過ぎると「野暮」になって不名誉なレッテルが貼られてしまうんですって。

 

意地っ張りで見栄っ張りな江戸っ子気質が、初もの食いと結びついて、度を越した狂乱の初鰹ブームを引き起こした、というわけ。

 

この初鰹ブームは1781年~1800年ころが最盛期で、およそ40年間くらい続いたとか。

 

現代でもタピオカが流行ったり、古くはティラミスとかナタデココとか(古い!?)ブームになってきましたよね。

基本的に日本人はミーハーで新しいもの好き。

 

その原点が江戸にあったとは!驚きです。

 

現代では、安定的に食材が手に入りますから初ものに命をかけるようなことはないですが、旬を大事にすることは日本の伝統文化でもあります。

 

旬のものはとにかく美味しい。

そして、旬を分かっているとやっぱり「粋」で格好良いのです。